2026/5/21
個人事業主が任意整理をしたらどうなる?事業への影響や債務整理について解説します
任意整理

個人事業主として事業を行っていると、借金の返済や資金繰りに悩むこともあります。
自分で事業をしている場合「任意整理をしたら事業を継続できるのか」「取引先や家族に影響が出るのではないか」という不安からなかなか踏み出せないということもあるでしょう。
個人事業主の場合、生活費と事業用の支払いが一体になることも多く、資金繰りが苦しくなったときに、消費者金融や金融機関から借入をしたり、事業用ローンやクレジットカードのキャッシング、そして、取引先への支払いなどが重なり、多重債務になってしまうケースもあります。
個人事業主の場合、債務整理による事業への影響がそのまま生活に直結するため、債務整理を検討する際には、任意整理・個人再生・自己破産など、それぞれの手続きの特徴や事業への影響を正しく知ることが必要です。
この記事では、個人事業主が任意整理をした場合の事業への影響、注意点、個人再生や自己破産との違い、弁護士に相談するメリットについて解説します。
任意整理は債務整理のひとつ
任意整理とは、借金を整理する債務整理の方法のひとつです。
債務整理には、主に3つの方法があります。任意整理・個人再生・自己破産です。どの方法が適しているかは、借金の額、収入、財産、事業の状況、将来の返済可能性などによって異なります。
個人事業主の場合、事業を継続しつつ借金を整理して再起したいと希望する方が多く、任意整理で対応可能かどうかを検討することがあります。
任意整理の特徴
任意整理は、裁判所を介することなく債権者と直接交渉して返済条件を見直して返済をするという方法です。
多くの場合、弁護士や司法書士に依頼して行われます。将来の利息の減額または免除、毎月の返済額の減額、返済期間の見直しなどを直接交渉します。
任意整理の大きな特徴は、対象とする債権者を選択できるという点です。たとえば、事業に必要な取引先やリース契約、住宅ローン、自動車ローン、保証人がついている借金などを整理の対象から外して、消費者金融やクレジットカード会社だけを対象にすることも検討できます。これは、裁判所を介さない任意整理の特徴のひとつです。
ただし、任意整理はあくまで債権者との話し合いによる手続きであり、強制力はありません。そのため、債権者が交渉に応じないこともありますし、合意が得られるまで交渉するしかないのも事実です。
また、後述する個人再生や自己破産のように借金の元金を減らすことはできません。
個人再生
個人再生は、裁判所を介した債務整理の方法です。任意整理とは違って裁判所の手続であるため、決定には強制力があります。
個人再生は、借金を大幅に減額し、残りを分割返済していくというものです。個人再生の手続をするためには、継続的に収入を得る見込みがあること、借金の総額が住宅ローンを除いて5000万円までといった条件があります。
個人事業主の場合、毎月の収入に変動があることも多いため個人再生が認められるかはケースバイケースです。
また、個人再生は、条件を満たせば住宅ローンのある住宅を残したまま債務整理が可能という点も特徴です。
自己破産
自己破産は、裁判所の手続きを経て免責が認められれば借金の返済義務がなくなるというものです。
税金や養育費などは免責されませんが、銀行、クレジットカード、カードローン、消費者金融からの借金などは免責の対象となります。
ただし、自己破産をした場合は、原則として自由財産以外の財産が処分の対象になります。個人事業主の場合は、事業用の機械、在庫、売掛金、不動産、車両、設備などが財産として処分の対象になる可能性があるため、事業の継続が難しくなるケースもあります。
任意整理は事業への影響が少ない債務整理
個人事業主が債務整理を検討する場合、任意整理は事業への影響が少ない債務整理の方法です。
任意整理は、裁判所を介さないため、財産の処分は原則として行いません。また、整理する債権者を選べるため事業への影響が少ないのです。
もちろん、全く影響がないというわけではなく、信用情報機関に事故情報が登録されるといった影響はあります。
話し合いで行うため財産の処分は行わない
任意整理は、多くの場合弁護士などの代理人を介して債権者と交渉します。現在の返済条件を見直して借金を整理していくという方法です。
裁判所を通す個人再生や自己破産とは異なり、原則として財産を処分する手続というものではなく、あくまでも返済に関する話し合いです。
そのため、個人事業主が事業用の道具、機材、車両、パソコン、在庫などを利用している場合でも、財産が処分されるわけではありません。
たとえば、運送業、建設業、美容業、士業、クリエイターなど、事業用資産が業務の継続に必要という場合は、財産を残せるという点は大きなメリットといえます。
一部の負債のみ任意整理できる
任意整理をする場合は、すべての借金を対象にする必要はありません。個人再生や自己破産とは違って、話し合いと合意によるものですから、自分で整理する債務を選べるのです。
つまり、一部の債権者のみを対象にすることもできます。例えば、事業に大きな影響を与える契約や取引先については整理対象から外すことも可能です。
・保証人がついている借金を対象から外す
・事業用車両のローンを対象から外す
・取引先との契約に関係する債務を対象から外す
・住宅ローンを対象から外す
・事業継続に必要なリース契約を対象から外す
このように、任意整理では事業への影響を考慮した柔軟な対応が可能です。
つまり、言い方を変えれば、どの債権者を対象にするかによって、毎月の返済額、将来の資金繰り、取引先との信頼関係、保証人への影響が変わるということでもあります。
任意整理をした場合の事業への影響
任意整理は、個人事業主にとって事業への影響が比較的小さい債務整理ですが、まったく影響がないわけではありません。
特に注意すべきなのは、信用情報機関への事故情報の登録による新たな借入の難しさ、クレジットカードやローンの制限です。個人事業主が任意整理をした場合の影響について整理しましょう。
事故情報(ブラックリスト)が記載される
任意整理を行うと、信用情報機関に事故情報が登録されます。これはいわゆる「ブラックリスト」と呼ばれる状態になるということです。
新しい借り入れが一定期間出来なくなる
事故情報が登録されると、クレジットカードの利用、ローン、借入、分割払い、後払い、保証契約などの審査が難しくなります。また、リースやスマートフォンの機種の分割払いもできないと考えましょう。
新しい借り入れができないという状態になるため、事業用の資金調達や設備投資に影響する可能性があります。
また、事業用のクレジットカードを利用して仕入れや広告費、交通費、通信費などを支払っている場合、カードが使えなくなると業務に支障が出るケースも想定されます。
任意整理を行う前に、現金払いへの変更、デビットカードの利用、口座振替の対応など、代わりの支払い方法を確保しておきましょう。
事故情報とは?
事故情報とは、信用情報機関に登録された、返済遅延、債務整理、代位弁済、強制解約などを行った履歴のことです。事故情報が記載されることが「ブラックリスト」と表現されています。
任意整理の場合、完済から5年程度は事故情報が残っているとされています。一度、事故情報が登録されても一生そのままというわけではありません。
個人事業主が任意整理をする場合の注意点
個人事業主が任意整理をする場合、注意点があります。
特に、保証人、取引先、事業用資産、売掛金、税金、確定申告、将来の資金繰りについては前もって影響を把握しておくとよいでしょう。
保証人への影響
保証人がついている借金を任意整理の対象にすると、債権者から保証人に「代わりに返済してください」という請求が行われます。 たとえば、家族や親族、知人などが保証人になっている場合、本人が任意整理をしたことで保証人に一括請求や督促が届くということです。
これにより、家族関係や信頼関係に大きな影響が出るケースもあります。
そのため、保証人がいる債務を任意整理の対象から外す、あるいは、事前に保証人と話し合うことが必要です。
取引先との信頼関係
個人事業主の場合、債務整理をしたことを取引先に知られたくないというケースもあるでしょう。
任意整理は、裁判所を介さない手続であり、官報に掲載されることもありません。そのため、通常は取引先に直接知られる可能性はそれほど高くありません。
また、任意整理の対象となるのは、一般的にはクレジットカード会社、消費者金融、銀行などの金融機関からの借入れです。取引先への買掛金や未払い外注費、業務委託費、リース料などについては、通常は任意整理を行うことは難しいです。
そのため、事業上の取引先に対して任意整理の通知が送られることは通常なく、直ちに取引へ影響が生じる可能性は高くありません。
個人再生や自己破産の場合
任意整理では返済が難しいという場合、個人再生や自己破産を検討します。
個人事業主が任意整理ではなく個人再生や自己破産を選択する場合はどのような影響があるのでしょうか。
個人再生でも事業は継続できるケースがある
個人再生は借金の元金を減額できるため、任意整理では返済が難しいケースで選ばれることが多い債務整理の方法です。
任意整理のように、整理する債務を選ぶことはできません。もっとも、個人再生は資格制限がなく、原則として財産の処分も不要であるため、事業を継続しやすいという側面があります。
たとえば、事業に必要な機械、道具、車両、パソコン、什器、在庫などを残して、借金を減額できるのです。
ただし、資産価値が高い場合は清算価値に反映され、返済総額が増えることもあります。
自己破産の場合は事業の継続は難しくなることも
自己破産の場合、自由財産以外の財産は原則として処分の対象になります。個人事業主の場合、事業用資産も財産に含まれるため、事業の継続が困難になるケースがあります。
たとえば、事業用の車、機械、在庫、不動産、売掛金、店舗設備などが処分対象になると、業務を続けることが難しくなってしまいます。
また、自己破産をした場合は、一部の資格や職業について資格制限があることも知っておきましょう。弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、行政書士、保険募集人、宅地建物取引士、警備員などが資格制限の対象です。ただし、この制限は一生続くものではなく、破産手続きの開始決定から免責が許可されるまでです。
個人事業主が任意整理をする場合は弁護士に相談
個人事業主が任意整理を検討している場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士への相談や依頼には費用がかかるものの、メリットがあります。
弁護士に相談するメリット
弁護士に相談することで、現在の自分の状況に合った債務整理の方法を選択できます。
任意整理で対応できるのか、個人再生を選ぶべきか、自己破産を検討すべきかは、借金の額だけで決まるものではありません。収入、財産、事業の継続可能性、債権者の数、保証人の有無、取引先との関係、毎月の支払い、税金、将来の見通しなどを総合的に判断する必要があります。この判断には法的な知識や客観性も求められます。
弁護士に依頼すると、専門家として冷静な視点での判断をした上で、債権者との交渉、返済計画の作成、必要書類の確認、申立書の作成、裁判所対応などを任せることができます。
また、取引先や家族への影響を最小限に抑える方法についても相談できます。
依頼費用について不安がある場合
任意整理を検討している状態で「弁護士に依頼する費用がない」という方もいらっしゃるでしょう。
そのような場合は、無料の法律相談を利用してまずはアドバイスを貰うという方法があります。また、依頼費用については分割払いも検討できます。
まとめ
個人事業主が任意整理をした場合でも、事業が継続できなくなると決まったわけではありません。
任意整理は、裁判所を介さずに債権者と話し合って返済条件を見直す債務整理の方法です。
原則として財産の処分は行われず、一部の債務だけを対象にできるため、事業への影響を抑えながら借金問題を整理できる可能性があります。
一方で、任意整理をすると信用情報機関に事故情報が登録されるため、借り入れやクレジットカード、ローンの利用等は一定期間難しくなることも忘れないようにしましょう。
また、保証人がついている借金を任意整理の対象にすると、保証人への請求が生じることもあります。
個人事業主の場合、ひとりで借金問題を抱えてしまうケースも少なくありません。返済が苦しい、資金繰りが難しいという場合は、「債務整理はできない」と決めつけずに弁護士へ相談して自分の状況に合った解決方法を探しましょう。
セントラルサポート法律事務所
弁護士 安井孟(埼玉弁護士会所属)
任意整理をはじめとした債務整理業務に特化した法律事務所を運営しております。

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