2025/12/17
自衛官は債務整理できる?債務整理した場合の影響や職場に知られるケースや注意点を解説します
債務整理

クレジットカードやカードローン、住宅ローンなどの返済が苦しくなり、「債務整理を考えているけれど、自衛官でも手続きして大丈夫なのか」「職場に知られたり、懲戒処分になったりしないか不安だ」という方は少なくありません。
自衛官は公務員であり、任務の性質上「金銭問題に厳しいのではないか」「借金のトラブルがあると自衛隊を辞めなければならないのではないか」と心配される方も多いでしょう。
しかし、自衛官であっても一般の方と同じように債務整理の手続きができます。
今回は自衛官が債務整理をする場合について解説します。
債務整理は自衛官も利用できる借金の整理方法
まずは、「そもそも債務整理とはどのような方法なのか」「自衛官でも本当に利用できるのか」という基本から確認しておきましょう。
債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産といったいくつかの手続きがあり、それぞれ減額の範囲や生活への影響が異なります。
債務整理とは
「債務整理」とは、借金を整理して返済方法を見直し、合法的な手続きで返済負担を軽減したり、支払いを免除する制度のことです。
クレジットカードや消費者金融、銀行カードローン等で毎月の支払いが困難になった場合に利用される方法で、毎月の返済額の減額や将来利息のカット、そして、一部または全部の借金の免除(免責)といったメリットがあります。
もちろん、自衛官であっても、借金の返済が難しくなった場合は債務整理ができます。
✅任意整理
任意整理は、裁判所を利用せず、弁護士が各債権者(消費者金融、銀行、クレジット会社など)と個別に交渉を行うというものです。
任意整理を行うと、今後の利息(将来利息)が減額免除され、3年から5年程度(36回~60回程度)の分割払いとなることで、毎月の返済額が減額されます。
任意整理のメリットは、家族や職場など周囲に手続きを知られにくいこと、財産を失わないこと、個人再生や自己破産と比較して費用が安く済むこと、手続きが比較的簡単であることです。
✅個人再生
個人再生は、借金を大幅に減額したうえで、残りの借金を分割で返済していくという、裁判所を通して行う手続きです。
個人再生の大きなメリットは、一定の条件を満たせば住宅ローン付きの自宅を維持しながら、他の借金を整理できる可能性がある点です。
自衛官の方は、多くの方が利用する小規模個人再生という方法のほかに、給与所得者等再生という方法も選択することが可能です。
小規模個人再生では、負債総額又は債権者数の過半数の債権者が反対すると個人再生は認められませんが、給与所得者等再生では債権者の反対による影響はありません。
そのため、債権者の多くが反対している状況や、大口の債権者が存在するケースでは、小規模個人再生よりも給与所得者等再生の方が確実な手段と言えます。ただし、給与所得者等再生の場合、小規模個人再生より返済額が高額となる場合が多いため注意が必要です。
✅自己破産
自己破産は、裁判所を通じて行う債務整理です。
自己破産は、裁判所に「破産手続開始申立」を行い、最終的に「免責許可決定」が出れば、原則として税金や養育費などを除く借金の支払い義務がなくなります。
ただし、自己破産の場合は一定額以上の財産は処分されるため、自動車やマイホームを失う可能性があります。また、退職金見込額が一定金額以上の場合、退職金見込額の一部を回収される可能性もあります。
自己破産の場合、一定の資格・職業について一時的な資格制限が発生する場合がありますが、自衛官はこの資格制限の対象には含まれていません。この点については後ほど詳しく解説します。
自衛官が債務整理をしたら職場に知られるのか
自衛官の方が債務整理をためらう大きな理由のひとつに、「職場に知られたらどうしよう」という不安があります。
自衛隊という組織の特性上、極めて厳格で金銭トラブルにも敏感なイメージを持つ方も多く、「借金問題があると部隊にいづらくなるのでは」と心配されるというケースもあります。
ここでは、債務整理が職場へ伝わる可能性があるのか、どのような場合に知られる可能性があるのかを整理して解説します。
任意整理であれば知られる可能性は低い
「債務整理をしたら、職場の上司や同僚に知られてしまうのではないか」という不安は、自衛官・一般の公務員を問わず多くの方が感じるポイントです。
結論から言えば、任意整理であれば職場に知られる可能性は低いです。
一方で、個人再生や自己破産の場合は、職場に知られる可能性があります。
個人再生や自己破産を行うと職場に知られる原因
債務整理をしたからといって、職場に連絡がいくということはありません。
もっとも、個人再生や自己破産の場合、意図せず職場に知られてしまうケースがあります。
ここでは、自衛官が個人再生や自己破産をした場合に職場に知られる原因を整理して解説します。
✅官報
裁判所を通して行う個人再生や自己破産は、官報に氏名や住所などの情報が掲載されます。
官報は公開されている情報ですので、個人再生や自己破産を行った事実を知ることができます。
しかし、日常的に官報をチェックしている人は多くありませんし、官報をきっかけに職場の人に知られる可能性は一般的には低いと考えられます。
ただし、上司や同僚が目にする可能性はゼロではありません。
✅退職金見込額の資料提出
個人再生や自己破産においては、裁判所へ申立てを行うため様々な資料の提出が必要です。
そして、提出しなければならない資料の中には、退職金見込額の金額がわかる資料があります。
退職金見込額の資料は、職場から発行してもらう必要があるため、発行する際に職場の方に理由を聞かれ、個人再生や自己破産を知られる可能性があります。
✅給与差押え
返済を長期間滞納し、債権者から裁判を起こされて判決・支払督促などが確定した場合、給与差押えが行われるケースがあります。
当然、自衛官の給与も差押えの対象となるため、裁判所から自衛隊の部隊や人事部門に対し、差押命令書が送られ、職場の方に借金問題が知られてしまう可能性があります。
債務整理をしても自衛官を続けられる
「債務整理をしたら、自衛官を続けられなくなるのではないか」という不安を抱える方もいらっしゃいます。
特に、自己破産については「職業や資格に制限がある」ため、「自衛官の仕事ができなくなるのでは?」と考えてしまうこともあります。
ここでは、自己破産の資格制限と自衛官の関係、実際に職務を続けられるのかという点について、ポイントを整理して解説します。
自己破産の資格制限に自衛官は含まれない
自己破産を行うと、「破産手続開始決定後、免責許可決定が出るまでの間、一部の職業や資格について業務ができない」という資格制限があります。
以下の職業については、一定期間制限を受けます。
ここで重要なのは、自衛官はこの資格制限の対象に含まれていないという点です。
つまり、自己破産をしても、原則として自衛官としての身分を失うわけではなく、自己破産を理由に免職・懲戒となる仕組みはないのです。
資格制限とは
「資格制限」とは、自己破産をした場合にのみ発生する一時的な制限のことです。
裁判所に破産申立てを行い、破産手続開始決定が出てから免責許可決定が出るまでの間、一定の職業・資格に就けなかったり、その業務を行えなくなるというものです。
債務整理を理由に懲戒の対象になることはない
自衛官は、公務員としての身分とともに、自衛隊という組織の一員として高い倫理観や規律が求められています。
そのため、「債務整理をして借金の整理をすることで懲戒処分になるのではないか」「人事評価に大きくマイナスになるのではないか」と心配して一歩を踏み出せないという方もいらっしゃいます。
ここでは、債務整理と懲戒の関係について整理します。
債務整理は法的に認められた手続きであるため懲戒の可能性はない
自衛官は、国の安全を守るという立場であり、公務員として高い倫理観や信用が求められます。
そのため「借金問題があると懲戒処分になるのではないか」と心配されることもあります。
しかし、債務整理は法律で認められた正当な手続きであり、それ自体を理由として懲戒処分の対象とすることはありません。
債務整理は、悪いことでもなければ、責められるべき手続きでもないのです。
自衛官の方で債務整理を検討している場合は弁護士に相談を
実際に債務整理を考えたとき、次の悩みとして出てくるのが「どこに相談すればいいのか」という問題です。
自分で手続きを進めることも法律上はできますが、慣れていないと非常に難しいのが現実です。
ここでは、自衛官が安心して相談できる窓口として、弁護士・法律事務所を利用するメリットを解説します。
弁護士には守秘義務がある
債務整理を検討する際、家族や同僚、上司には話しにくいケースもあります。
そして、そもそも知られたくないと思っているにもかかわらず、職場の上司に借金の事情を打ち明けるのは本意ではないでしょう。
弁護士には、法律で「守秘義務」が課されています。ですので、相談者の氏名・住所・職業・借入額・収入や生活状況などの情報を、本人の許可なく外部に漏らすことはできません。
・自衛官であること
・借金の総額や毎月の返済額
・クレジットカードの利用状況
・住宅ローンや自動車ローン、その他のローンの有無
・家族に知られたくない事情
といった内容も、安心して相談することができます。
相談があったという事実についても外部に漏らすことはありません。
手続きを代行できる
弁護士に債務整理を依頼すると、書類の作成や手続きについて総合的にサポートしてもらえます。
特に、自衛官の方の場合、勤務が不規則であったり、演習や災害派遣などで長期間不在となることもあります。
そのような状況で、本人がすべての手続きや交渉を行うのは現実的に難しいケースも少なくありません。
弁護士に依頼することで、取立てや督促の電話が止まり精神的な負担が軽くなるだけでなく、手続きの多くを代行してもらえます。
まとめ
自衛官であっても、一般の方と同じように任意整理・個人再生・自己破産などの債務整理を利用できます。
そして、債務整理を理由に職を失ったり懲戒処分を受けたりすることはありません。債務整理は法律で認められている合法的な手続きであり、処分の対象にはならないのです。
また、任意整理であれば家族や職場に知られる可能性は低いです。
借金の返済が難しいと感じたら、ひとりで抱え込まず、早めに債務整理に強い弁護士へ相談することが大切です。
弁護士には守秘義務があり、自衛官であることや家族の事情も含めて安心して話すことができます。
返済に追われて苦しいときは、生活を立て直すための合法的な制度が用意されていることを思い出して、専門家のサポートを受けましょう。
セントラルサポート法律事務所
弁護士 安井孟(埼玉弁護士会所属)
任意整理をはじめとした債務整理業務に特化した法律事務所を運営しております。

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