2025/5/27
債務整理をすると賃貸契約はどうなる?審査や退去などの影響を解説
債務整理
債務整理を検討されている場合、現在住んでいる賃貸物件の契約がどうなるのか気になっている人は多いのではないでしょうか。
「債務整理したら家を追い出されてしまうのではないか?」「新しい物件に引っ越しできなくなるのではないか」といった不安を抱え、債務整理の依頼を躊躇している方もいるかと思います。
そこで、本記事では債務整理が及ぼす賃貸物件への影響について、さまざまな視点から詳しく解説します。債務整理の中でも自己破産における注意点にも触れますので、ぜひご一読ください。
債務整理をすると賃貸契約をしている物件はどうなる?
債務整理とは、主に「任意整理・個人再生・自己破産」の3つの手続きを指します。
いずれの方法も借金問題を解決する方法であり、手続き後は「信用情報機関」(いわゆるブラックリスト)に情報が登録されます。
では、債務整理を行ったら賃貸契約にはどのような影響が及ぶのでしょうか。
滞納家賃がない場合
家賃の滞納がない状態で債務整理をした場合、現在契約している賃貸契約が債務整理を理由に解除されることはありません。
もしも、大家や不動産会社側が官報などを見て債務整理の事実を知ったとしても、その事実を理由に契約の解除や立ち退きの請求はできません。
ただし、債務整理の中でも自己破産の場合には、「敷金・保証金」について少し注意が必要です。
自己破産では賃貸物件の「敷金・保証金」は差押え禁止財産ではないため、金額によっては債権者へ配当すべきものとされています。
もっとも、実際には、居住用の賃貸物件であれば賃貸借契約を解約してまで敷金・保証金を回収されることはほとんどありません。
滞納家賃がある場合
滞納家賃がある場合、賃貸契約を解除される可能性があります。
一般的に2、3か月以上家賃を滞納していると解除されるおそれがあるため注意が必要です。
ケースによっては強制執行のおそれもあるため、弁護士と協議しながら進めましょう。
・任意整理の場合
任意整理の場合、家賃は任意整理の対象に入れずに支払いながら、その他の借金の整理を行うことが可能です。この場合、自宅に住み続けることが可能です。
ただし、家賃も任意整理すれば自宅から退去せざるを得なくなります。
・個人再生の場合
個人再生の場合、原則として滞納家賃も債権者に含めて裁判所へ申立てする必要があります。
特定の債権者にのみ返済を行う「偏波弁済」はできないため、親族や同居人に家賃を支払ってもらうなどの「第三者弁済」が考えられます。
・自己破産の場合
自己破産の場合も個人再生と同じく、原則として滞納家賃も債権者に含めて裁判所へ申立てする必要があります。
特定の債権者にのみ返済を行う「偏波弁済」はできないため、親族や同居人に家賃を支払ってもらうなどの「第三者弁済」が考えられます。
家賃を滞納し続けるとどうなる?
家賃を滞納し続けると、大家や家賃保証会社側から賃貸契約の解除や明け渡し請求が行われます。
一般的に内容証明郵便で契約解除通知が送付され、その後に訴訟や強制執行(明け渡し)が行われます。
家賃を滞納している場合には、自宅から退去されないよう、まずは家賃以外の借金を整理して何とか家賃を支払えないか弁護士に相談してみると良いです。
次の更新ができないおそれがある
家賃の滞納がない場合でも、債務整理をしたという事実は家賃保証会社の「更新」に影響を与える可能性は否定できません。
賃貸契約の更新時には、家賃保証会社が信用情報機関に情報照会を行うことがあるためです。
この時に債務整理の情報(事故情報)を把握すると、家賃保証会社(特に信販系)が家賃保証の更新を拒むおそれがあります。
■信販系の家賃保証会社の一例
株式会社アプラス
株式会社エポスカード(ROOM iD)
株式会社オリコフォレントインシュア
株式会社クレディセゾン
株式会社ジャックス
など 信販系の家賃保証会社は、更新希望者についてCICやJICCといった信用情報機関に問い合わせを行うため、債務整理を行ったことを把握できます。
債務整理によって家賃保証が更新されないケースでは、別の家賃保証会社を依頼したり、連帯保証人を新たに付けたりなどの交渉によって契約が継続できる可能性はあります。
信用情報は自分で確認できる
信用情報機関に登録されている事故情報は自分で確認(開示請求)することができます。
事故情報を確認した上で、新たな賃貸契約を検討することもおすすめです。
各信用情報機関への開示請求については以下をご確認ください。
・CIC (株式会社シー・アイ・シー) 情報開示とは
・JICC(株式会社日本信用情報機構) 信用情報を確認したい方
・KSC(一般社団法人全国銀行協会) 本人開示の手続き
LICCへの加入物件における注意点
家賃を滞納している場合、家賃保証会社が信販系ではなくても「LICC」に加入している場合は注意が必要です。
「LICC」とは家賃保証会社が加入している信用情報機関であり、登録されるとブラックリスト入りしているおそれがあります。
次の更新に影響が発生する可能性があるためご注意ください。
参考URL 一般社団法人 全国家賃保証業協会
債務整理後に賃貸契約におよぼす影響とは
債務整理を行う際には、債務整理後に少なからず賃貸契約に影響が発生することがあります。
この章では債務整理後の注意点を交えながら影響について詳しく紹介します。
クレジットカードでの家賃支払いはできない
債務整理を行うとクレジットカードは原則として利用できなくなります。
家賃をクレジットカードで支払っている場合は、支払い方法を変更する必要があります。 銀行口座からの引き落としや現金の振込など、他の支払い方法について大家や管理会社と協議する必要があります。
なお、勤務先など自分以外の名義で賃貸契約を行っている場合は原則として影響はありません。
転居希望先の審査に落ちる可能性がある
こちらもすでに少し触れましたが、債務整理の情報は信用情報機関に一定期間登録されるため、引っ越し希望の転居先の審査に落ちてしまうおそれがあります。
これは、賃貸物件の入居審査において家賃保証会社がこの信用情報を照会すると事故情報が判明するためです。
信用情報に債務整理の履歴が登録されている場合、家賃保証会社の審査に通らず、結果として賃貸契約を結べないという事態が生じる可能性があります。
特に信販系の家賃保証会社を利用している物件では、審査が通らない可能性が高いです。
債務整理の事実だけで契約解除は起きない
家賃の滞納がない限り、債務整理をしたという事実のみを理由として大家や管理会社が一方的に賃貸契約を解除することはありません。債務整理をしている方の多くが、賃貸契約の物件に継続して住んでいます。
もし家賃を滞納し、退去をうながされたとしても、強制執行が行われるより前に突然自宅の荷物を捨てられたりするおそれもありません。
大家や管理会社が一方的に部屋に立ち入り、荷物を処分したり強制的に退去させたりするようなことは不法行為に該当します。
賃貸契約の解除や明け渡しには、訴訟や強制執行など法的な手続きが必要となります。
自己破産後の家賃はどうする?
債務整理の中でも自己破産をした場合には、ほとんどの借金が免責となるため生活を再建しやすくなります。
しかし、生活を安定させるためには住まいの存在が欠かせません。
そこで、この章では自己破産後の家賃について詳しく解説します。
自己破産の場合|家賃は免責対象
自己破産の場合、家賃は他の借金と同様に免責の対象となります。
つまり、免責許可がなされれば支払義務が法的に免除されます。
ただし、家賃を滞納して自己破産を行えば、賃貸契約は解除され自宅を退去することになります。
そのため、自己破産を行った後は現在の賃貸物件から引っ越す必要があります。
自己破産時における引っ越しの注意点
自己破産時の引っ越しには注意点があります。
現在の住居から引っ越す場合、管財事件(破産管財人が選任されている破産のこと)の場合は破産管財人の許可が必要です。
仕事の転勤やご家庭の事情などを理由に引っ越しが内定している場合は、そのタイミングについて破産を依頼している弁護士に相談しておきましょう。
連帯保証人がいる場合はどうなる?
賃貸契約に連帯保証人がいる場合、滞納家賃について借主が自己破産を行うと連帯保証人が滞納家賃の支払い義務を負います。
自己破産によって借主の支払義務が免責されても、連帯保証人の支払義務はなくなりません。
家賃以外の連帯保証人も同様です。
一方で、任意整理において家賃については任意整理せず問題なく支払っている場合は、他の借入先について任意整理を行っても、賃貸契約の連帯保証人に影響は及びません。
家賃を滞納している賃貸契約に連帯保証人が存在する場合、連帯保証人の方には自己破産を行う前に請求がなされることを伝えておきましょう。
債務整理後に新規物件に引っ越したい場合のポイント
債務整理後、新たな賃貸物件に引っ越したい場合には、いくつかのポイントを押さえておくことで契約できる可能性が高まります。
この章で4つのポイントを紹介しますのでご一読ください。
1.保証会社不要の賃貸契約がおすすめ
新規物件で新たに賃貸契約を結びたい場合、家賃保証会社の利用が必須ではない物件を探すのがおすすめです。
個人大家が管理している物件や、家賃保証会社ではなく保証人だけで契約できる物件などを中心に探してみましょう。
2.公営住宅なら入居がスムーズ
公営住宅(都営住宅や市営住宅など)は、入居審査において信用情報を重視しない傾向があります。
収入要件などを満たせば、債務整理の経験があっても比較的スムーズに入居できるでしょう。
ただし、公営住宅は家賃が抑えられていたり、立地が優れていたりするところも多いため人気が高い傾向があります。
空きがない場合や入居待ちの期間が長い場合もあります。
早めに情報収集を行い、申し込むようにしましょう。
3.家族や同居人に契約や保証人をお願いする
同居する人がいる場合や、債務整理の事情について話を行うことができる家族がいる場合、その方の名義で賃貸契約を結んだり、連帯保証人を依頼することも一つの方法です。
同居人や家族に安定した収入があれば、入居審査に通る可能性が高くなります。
代理契約における注意点
ご自身が入居する物件を別の方の名義で契約することを「代理契約」といいます。
代理契約は大家・管理会社側の許可が必要であり、入居者以外の誰かが自由に契約してよいものではありません。
許可なく契約者以外が住むことを禁止している物件が多いため、違反すると契約解除になるおそれがあります。
代理契約は一般的に配偶者や子など親族の場合は認められやすい傾向があります。
4.住宅ローンは一定期間組めない
債務整理後に住宅ローンを組んで家を購入したいと考える人もいるでしょう。
しかし、住宅ローンもクレジットカードなどと同様で、過去に債務整理の経験があると一定期間利用できません。
住宅ローンは任意整理の場合は完済後5年間、個人再生や自己破産の場合は完済ないし免責後7年程度は組めない可能性が高いでしょう。
加えて、住宅ローンは長期の返済を前提とする契約のため、収入や健康状態など厳しい審査が用意されています。
ただし、配偶者や子など別の家族が住宅ローンを組む際には、本人の債務整理は影響しません。
まとめ
本記事では、債務整理の際に知っておきたい賃貸契約への影響について詳しく解説しました。
債務整理を行っても家賃を滞納していない場合は影響なく暮らすことができます。
しかし、長期間の滞納がある場合は、債務整理をきっかけに退去を求められるおそれがあるため、弁護士に相談しながら手続きを進めることが大切です。
賃貸契約への影響を気にして借金問題を放置していると、債務整理の選択肢も狭まってしまいます。
まずはお早めに弁護士へご相談ください。
セントラルサポート法律事務所
弁護士 安井孟(埼玉弁護士会所属)
任意整理をはじめとした債務整理業務に特化した法律事務所を運営しております。

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