2025/5/28
【徹底検証】任意整理は2回目もできるってホント⁉
任意整理
任意整理とは、借金の返済が困難になった際に、主に今後の利息(将来利息)や毎月の返済額を減額することを目的として、債権者と交渉を行い和解を目指す債務整理の一手段です。
この手続きは、裁判所を通さずに進めることが可能で、手続きが比較的簡易であることから、比較的多くの方に利用されています。
借金問題を抱える方の中には、任意整理によって生活の再建を果たしたという方も少なくありません。
しかし一方で、生活環境の変化や収入の減少、突発的な支出などの事情により、任意整理の返済を滞納してしまったり、任意整理完済後に再び借金が膨らみ、再度の任意整理を検討せざるを得なくなるケースもあります。
そうしたとき、「任意整理は2回目も可能なのか?」という疑問が浮かぶのは自然なことでしょう。
本記事では、任意整理の手続きに回数制限があるのか、2回目の任意整理が実際に可能なのか、そしてその際に注意すべき点や成功に導くためのポイント、仮に任意整理が認められなかった場合の代替策まで具体的かつ実践的に詳しく解説していきます。
再び借金問題に直面してしまった方にとって、今後の選択肢と判断材料となる情報を提供することを目的としています。
任意整理に回数制限はない
1回目の任意整理を受けた者の立ち位置
任意整理には法的に回数制限は設けられていません。
そのため、法律上は何度でも任意整理を行うことが可能です。
これは、任意整理が裁判所を通さない私的交渉であるためで、債権者が和解に同意さえすれば何度でも任意整理が成立するという特徴があります。
そのため、過去に任意整理を行った経験があっても、再び借金問題に直面した場合にもう一度任意整理を行うこと自体は制限されていないのです。
実際に、経済的事情の変化や予測不能な支出(医療費や家族の問題など)により、再度債務整理が必要となる方も少なくありません。
ただし、任意整理の返済中に返済が滞った、または和解内容を履行できなかった場合、再度同じ債権者と和解交渉を行うこと(再和解)が困難な場合もあります。
債権者にとって、債務者の返済実績は重要であり、再度の和解交渉には慎重になる傾向があります。
そのため、2回目の任意整理を検討する際には、1回目の任意整理の経緯や返済実績を踏まえ、弁護士などの専門家と協議し、債権者に納得してもらえる材料を揃えることが再度の任意整理成功のカギとなります。
2回目の任意整理も債権者が合意すれば可能
任意整理は、裁判所を介さない手続であるため、基本的には債権者と債務者の双方の合意によって成立します。
この性質上、債権者が将来利息の減額や長期分割返済(毎月の返済額の減額)などの条件に応じる意思を示せば、2回目であっても任意整理は成立可能です。
2回目の任意整理であっても、法的な障害はなく、交渉次第で柔軟に対応してもらえるケースも多々あります。
実際、債権者としても、返済不能によって全く回収できなくなるよりも、将来利息を減額してでも少しでも回収できる方が利益につながると判断する場合があります。
そのため、誠実な対応と実現可能な返済計画を提示することが重要です。
また、交渉にあたっては、債務者が再び返済困難に陥った原因や今後の収支見通しなど、詳細な事情説明が求められます。
信頼を取り戻すためにも、前回の任意整理と今回の状況の違いや改善点を明確に伝えることで、交渉を有利に進めることができるでしょう。
ただし、債権者が同意しない場合には任意整理は成立せず、その場合は他の法的手段(個人再生や自己破産など)を検討する必要が生じます。
したがって、債権者の合意を得るための準備と説明は1回目の任意整理以上に丁寧かつ慎重に行う必要があります。
1回目の任意整理と同一の債権者の場合
過去に任意整理を行った債権者に対して再び交渉を持ちかける場合、その交渉は極めて慎重に進める必要があります。
特に、前回の任意整理で和解契約を締結したにもかかわらず、返済が滞ったことによる再度の任意整理の場合(再和解と言います)、債権者の心証は決して良くありません。
債権者から見れば、「同じ債務者に再び返済を猶予しても、また返済されないのではないか」という疑念が生じやすくなります。
加えて、任意整理は法的拘束力のない私的な交渉であるため、債権者の信頼が交渉の成否を大きく左右します。
一度信頼を損ねた相手に対して再度条件交渉を申し出る場合には、その損ねた信頼をどう取り戻すかが鍵となります。
したがって、単に返済計画を提示するだけでなく、なぜ1回目の返済がうまくいかなかったのか、そして今回は何が違うのかを、誠実にかつ具体的に説明する必要があります。
たとえば、当時と比較して収入が安定している、家計管理を見直した、保証人や第三者からの支援があるなど、再度の任意整理が現実的かつ信頼性のあるものであることを示す材料を積極的に提示することが望まれます。
また、弁護士など第三者の専門家を介することで、客観的な視点での支援があることも債権者に安心感を与える要因となります。
このように、1回目と同一の債権者に対して再度任意整理を申し出るには、過去を真摯に受け止め、改善点を明確にし、信頼回復のための具体策を講じることが成功への近道となります。
1回目の任意整理と異なる債権者の場合
新たな債権者と任意整理を行う場合、過去の任意整理が直接的に不利益として作用するケースは比較的少ない傾向にあります。
特に、初めて取引する金融機関や消費者金融の場合、過去にどのような任意整理をしたかまでは詳しく把握していないことがほとんどです。
ただし、信用情報機関にはすでに1回目の任意整理に関する情報が登録されており、いわゆる「ブラックリスト」として扱われる期間中は、金融機関が情報を照会することでその履歴を知ることができます。
そのため、新たな債権者であっても、任意整理の履歴をもとに「返済能力に疑問がある」と判断する可能性は少なからずあるため、完全に影響がないわけではありません。
また、2回目の任意整理となる場合には、初回との違いを明確にする必要があります。
たとえば、前回の任意整理以降に生活環境がどう変化したか、今回なぜ再び借金問題が発生したのか、そして今回はどのような返済計画を立てているのかといった点を具体的に説明し、信頼を得ることが重要です。
さらに、初回と異なる債権者であるからこそ、誠実かつ現実的な返済案を提示し、計画の実現性を示すことが交渉を成功させる鍵となります。
毎月の収入や支出について細かく説明することにより、債権者としても対応しやすくなるでしょう。
このように、1回目の任意整理と異なる債権者との交渉では、過去の任意整理の影響を最小限に抑えつつ、新たな信頼関係を築くための工夫と誠意が求められます。
2回目の任意整理を成功に導くポイント
債権者との交渉役を弁護士に依頼する
任意整理の手続きにおいては、債権者との交渉が非常に重要な意味を持ちます。
特に2回目の任意整理ともなると、債権者側は債務者に対して一定の不信感を抱いている可能性があり、そのままでは交渉がスムーズに進まないこともあります。
そうした場合に頼りになるのが、交渉の専門家である弁護士の存在です。
弁護士に交渉を依頼することで、単なる感情論や曖昧な説明ではなく、根拠に基づいて債権者を説得することが可能になります。
弁護士は過去の任意整理の経緯や債務者の現在の状況を正確に把握し、適切な交渉方針を立てたうえで、債権者との話し合いを進めてくれます。
さらに、弁護士が介入していることにより、債権者にとっても安心感が生まれます。
根拠のない感情的なやりとりを避けられるうえ、返済計画が現実的かつ実行可能であることが第三者からの視点で裏付けられるため、信頼度が高まります。
また、弁護士は任意整理だけでなく、他の債務整理手続きに関する知識も有しているため、必要に応じて最適な代替策を提示してもらえる点も大きなメリットです。
弁護士費用が心配な方もいるかもしれませんが、分割払いなどの方法も用意されています。
2回目の任意整理を成功に導くためには、最初の一歩として弁護士に相談し、現実的な見通しを立てることが肝要です。
弁護士には再び任意整理をする必要が生じた理由を正直に伝える
再度任意整理に至った経緯については、弁護士に対して包み隠さず正直に伝えることが非常に重要です。
たとえば、突然の失業や転職による収入の大幅減少、病気やけがによる長期療養、さらには家族の介護や教育費の負担増加といった家庭事情など、経済的に再び困難な状況に陥った理由は多種多様です。
このような背景を正確かつ具体的に説明することで、弁護士は債務者の状況を的確に理解し、それに応じた現実的なアドバイスや、債権者にとって納得のいく説明を構築してくれます。
また、正直な申告がなされることで、再度の任意整理の必要性に対する客観的な評価が可能となり、最適な手続選択や交渉方法の提案にもつながります。
一方で、虚偽の説明や事実の隠蔽は、弁護士の判断を誤らせてしまうだけでなく、交渉の際に債権者からの信頼を大きく損ねるリスクもはらんでいます。
たとえば、収入を偽って多く見せた結果、実際には返済が困難となり再度の延滞が発生するような場合には、債権者から法的措置が取られるおそれがあります。
特に2回目の任意整理では、債権者側が慎重な態度を取ることが一般的であるため、説明の信頼性や誠実性が一層問われる局面となります。
債務者としては、前回の任意整理の反省を踏まえたうえで、改善された生活環境や家計管理の工夫、新たな収入源の確保といった取り組みを含めて、透明性のある情報提供を心がけることが大切です。
加えて、弁護士との信頼関係を構築することも極めて重要です。
弁護士は債権者との交渉を進めるうえで、債務者の代理人として全面的にサポートする立場にあります。
そのためにも、相談時点から正確な情報を共有し、今後の見通しをともに立てていく姿勢が求められます。
弁護士を「味方」にするには、まずは自らが誠実に向き合うことが出発点となるのです。
返済を確実に実施することを示す根拠を提示する
債権者との交渉を有利に進めるためには、返済が現実的かつ確実に実行可能であることを、客観的な資料に基づいて示す必要があります。
債権者は、債務者の「返済したい」という意思だけではなく、その意思が実際の行動として実現できるかを重視しています。
よって、単に口頭で返済の意思を示すだけでなく、具体的な裏付け資料を準備することが極めて重要です。
たとえば、現在の収入を証明する給与明細や源泉徴収票、確定申告書なども有力な資料となります。
さらに、毎月の収支状況を提示することで、家計全体の支出と収入のバランスを明示でき、安定した返済計画が実行可能であることの根拠になります。
また、必要であれば副業による収入増加や生活費の削減努力(固定費の見直しや保険の解約、支出の棚卸し)といった改善策をあらかじめ講じていることも好印象を与えます。
債権者としては、「この債務者は再建に向けて具体的に行動している」と感じられる資料や実績があるほど、交渉に前向きになる傾向があります。
とりわけ2回目の任意整理では、過去の返済実績に懸念を持たれていることが少なくないため、「今度こそ返済できる」という実行可能性を、数字と書面によって証明することが成功への鍵です。
そのため、弁護士とともに資料を精査し、債権者の立場に立って「納得できる」内容を構築していく姿勢が求められます。
2回目の任意整理について債権者の同意が得られない場合の措置
個人再生
任意整理が債権者の同意を得られずに成立しなかった場合、次に検討すべき手段のひとつが「個人再生」です。
個人再生は、裁判所の関与を伴う法的な債務整理手続であり、任意整理と異なり、債権者の同意がなくても(ただし小規模個人再生の場合は負債総額又は債権者数における過半数の債権者の同意が必要)法的に返済計画を進めることが可能になり得るという利点があります。
この手続きでは、借金の総額や債務者の収入・財産状況に応じて、原則として元本を大幅に減額したうえ、3年から最長5年の期間内で分割返済することが認められます(民事再生法第221条)。
財産状況によっては、500万円の借金が最大で100万円程度にまで圧縮されるようなケースもあり、返済の負担を大きく軽減できる可能性があります。
さらに、個人再生の特徴として、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用すれば、住宅ローンの残っているマイホームを手放すことなく他の借金だけを減額することができます。
これはマイホームを所有する債務者にとって極めて大きなメリットです。
もっとも、住宅資金特別条項には複数の条件があり、場合によってはマイホームを残せない場合もあります。
また、個人再生においては安定した収入が今後継続して見込めることや、提出する再生計画案が現実的であることなどが求められます。
また、裁判所に対して詳細な書類提出や面談、債権者からの意見提出の機会など、一定の手続的負担が伴います。
したがって、個人再生を検討する際には、専門的な知識を持つ弁護士に相談し、手続きの可否や見通し、実施のメリット・デメリットについて十分に検討することが不可欠です。
仮に任意整理が不成立に終わっても、個人再生という選択肢があることで、借金問題の解決に向けた道が閉ざされるわけではないという点は非常に心強いものと言えるでしょう。
自己破産
返済不能の状態が深刻で、今後も継続的な返済が不可能と判断される場合には、「自己破産」という法的手続きを選択することが検討されます。
自己破産とは、裁判所に申し立てを行い、すべての借金を法的に免責(帳消し)してもらう手続きであり、最終的な債務整理手段といえます。
自己破産が認められると、ほとんど全ての借金(税金や養育費など非免責債権を除く)の返済義務が免除され、債務者は経済的再スタートを切ることが可能となります(破産法第253条)。
自己破産には「同時廃止」と「管財事件」という2つの手続きがあります。
同時廃止は、債務者にめぼしい財産がなく、免責不許可事由も存在せず、破産管財人による調査が不要と判断される場合に選択される比較的簡易な手続きです。
一方で、一定の財産がある場合や、免責不許可事由(浪費、ギャンブル、偏頗弁済など)が疑われる場合、個人事業主の場合、その他破産管財人の調査が必要と判断される場合には、破産管財人が選任される「管財事件」となり、より詳細な財産調査や報告が求められます。
また、自己破産にはメリットとデメリットの両方が存在します。
メリットとしては、非免責債権を除く全ての借金から解放される点が最大の魅力ですが、デメリットとして、信用情報機関に破産記録(事故情報)が登録されることにより、一定期間(通常5年から10年程度)は新たな借入やクレジットカードの利用等が困難になります。
さらに、士業や警備員、宅建士、保険外務員、会社役員の方など、一定の職業に就く場合には資格制限が生じる可能性もあります。
ただし、これらの制限は破産手続き中に限られ、免責決定が下された後には多くの場合で解除されます。
このように、自己破産は生活再建のための有効な手段である一方で、手続き上の負担や社会的影響も少なからず伴います。
そのため、任意整理や個人再生が困難な場合の「最後の手段」として考えられる場合も多く、申立てにあたっては、弁護士など専門家の助言を得たうえで、慎重に判断することが求められます。
まとめ
任意整理は一度限りの手続きという誤解を受けがちですが、実際には2回目の手続きも可能です。
法律上、任意整理に回数制限はなく、あくまでも債権者との合意に基づく私的整理であるため、事情に応じて再度交渉を行うことが認められています。
ただし、1回目の任意整理での履行状況や、現在の返済能力は、債権者の判断に大きな影響を与える要素です。
再度の任意整理を成功させるためには、これまでの返済履歴や生活状況の変化を踏まえ、誠実で現実的な返済計画を策定することが重要です。
また、専門的な知見と交渉力を持つ弁護士に相談することで、債権者との信頼関係を築きやすくなり、交渉がスムーズに進む可能性が高まります。
再度の整理であることを念頭に、債権者に納得してもらえるよう、十分な資料や説明を準備して交渉に臨むべきです。
さらに、仮に任意整理が成立しなかったとしても、個人再生や自己破産といった法的債務整理の選択肢があります。
これらは裁判所を通じて借金問題を根本的に解決する制度であり、それぞれに特徴やメリット・デメリットが存在します。
自身の経済状況や生活環境に最も適した方法を選ぶためにも、法律の専門家とともに総合的に判断することが肝心です。
最終的に重要なのは、現状を正確に把握し、先送りにせず早期に行動を起こすことです。
借金問題は時間が経過するほど深刻化する傾向があるため、「2回目だから無理かもしれない」と諦めず、まずは信頼できる専門家に相談してみることが、再スタートへの第一歩となるでしょう。
セントラルサポート法律事務所
弁護士 安井孟(埼玉弁護士会所属)
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