任意整理は家族や会社にバレにくい債務整理方法です。早期に弁護士に相談し債権者との和解を成立させ、計画どおり返済していれば、家族や会社に連絡がなされることは基本的にはないため、自己破産や個人再生に比べるとバレる可能性は低いです。ただ、バレてしまうケースもあるので注意点やポイントを解説します。

任意整理をすると家族や会社にバレる⁉周りに内緒で任意整理する方法とは？

任意整理をすると家族や会社・勤務先にバレるのでしょうか？
借金を抱えている方の中には、借金のことや任意整理のことを家族や会社・勤務先にバレたくないと思う方は多いです。
そして、任意整理を行いたいと考えていても、任意整理を行えば家族や会社・勤務先にバレるのではないかと思い、なかなか任意整理に踏み切れない方もいるかと思います。
そこで、家族や会社にバレずに任意整理を行う方法について、埼玉県の事務所で借金・債務整理に特化する弁護士が解説していきます。

家族や会社にバレずに任意整理を行うことは可能？

結論から言うと、任意整理について家族や会社・勤務先にバレる可能性はかなり低いです。
※事情によってはバレる場合もありますので、絶対にバレないことを保証するものではありません。
では、なぜ任意整理は家族や会社・勤務先にバレにくいのでしょうか？

任意整理が家族や会社にバレにくい理由

• 1. 任意整理は裁判所を介さない手続きだから
• 2. 任意整理を行うと消費者金融からの督促がSTOPするから
• 3. 任意整理を行ったことは一般には公表されないから

それぞれ詳しく解説します。

任意整理は裁判所を介さない手続きだから

裁判所を介した債務整理の方法としては、自己破産、個人再生が挙げられます。
自己破産や個人再生では、裁判所に様々な書類を提出する必要があり、会社・勤務先から取得しなければならない書類もあります。
例えば、次のような書類です。

• ・退職金見込額証明書
• ・積立貯蓄制度などで積み立てた貯蓄の証明書

こうした書類はめったに必要になる書類ではないため、申請時に「なぜ」このような書類が必要なのか尋ねられてしまうこともあります。

一方、任意整理では次のような書類が必要になります。

• ・身分証明書
• ・印鑑
• ・借入先のクレジットカードやキャッシングカード

全て個人で用意できる資料です。
そのため、準備している書類から任意整理をしようとしていることがバレる恐れはないと言えます。

任意整理を行うと消費者金融からの督促がSTOPするから

消費者金融等の貸金業者が取り立てを行う際は、貸金業法21条に定められたルールを順守することが求められています。
まず、貸金業者は、正当な理由なく債務者の職場に取り立てに行くことはできませんし、電話をすることも認められていません（貸金業法21条1項三号）。
そのため、基本的には消費者金融等に借金があっても直ちに会社・勤務先にバレることは少ないです。
さらに、弁護士や司法書士が任意整理を受任した場合は、正当な理由なく債務者への取り立てを行うことは認められていません（貸金業法21条1項九号）。
弁護士や司法書士に任意整理を受任した場合は、消費者金融等に対して受任通知を発します。それ以降は債務者本人への取り立てや催促がストップします。
そのため、借金を抱えていることや任意整理を行っていることも他の人にバレにくくなります。

任意整理を行ったことは一般には公表されないから

自己破産や個人再生の場合は手続きが開始されると官報に氏名、住所等が掲載されてしまうため、公になってしまいます。
官報を定期的に見る人は少ないですが、自己破産の場合は持ち家や車などが換金されてしまうため、隣近所にも自己破産を行ったことがバレる可能性があります。
家族にバレずに行うことは基本的に不可能ですし、状況によっては会社にもバレてしまいます。

任意整理であれば、官報で公にされることはありませんし、基本的に自己破産のような差し押さえも受けません。
任意整理の交渉は、弁護士が消費者金融等と内密に行い、交渉結果も本人にしか知らされないため、会社・勤務先にバレることはありませんし、家族にバレずに行うことも可能です。

なお、任意整理でもブラックリストに載せられます（信用情報機関に事故情報として登録されます）。
任意整理後の債務を完済してから5年経過するまではブラックリストの掲載が続くため、その間は他の金融機関の住宅ローンその他の様々なローンやカードを利用することができません。そのために家族にバレてしまうことはあり得ます。
ただ、信用情報は一般には公開されていないため、信用情報から情報が洩れることは通常はありません。

このように、任意整理は家族や会社・勤務先にバレる可能性が低い手段です。
もっとも、何も対策を行わないと家族や会社・勤務先にバレる可能性があるので注意しましょう。

任意整理が家族や会社・勤務先にバレてしまうケースとは？

任意整理は家族や会社・勤務先に比較的バレにくいですが、やはり、バレてしまうこともあります。

自宅に督促状等が届く場合

自宅に消費者金融等からの請求や督促状、裁判所からの支払督促といった書類が届き、家族がそれを目にすれば、家族にバレてしまいます。
家族がいる場合において、既に借金を滞納しているケースでは家族にバレないようにするのは難しいと言えます。

滞納により給与が差し押さえられた場合

裁判所からの支払督促や訴状に対応せずに放置した場合、債権者側は裁判所での手続きを進めてしまい、強制執行の手続きを行うこともあります。
給料の差し押さえのために会社・勤務先に連絡がなされた場合は、借金をしていることや滞納をしていることも会社・勤務先にバレてしまいます。
任意整理後でも返済を2回分以上滞納した場合は、期限の利益の喪失と言い、債権者側から一括返済を請求されてしまいます。
一括返済できない場合は、裁判手続きに移行し強制執行がなされる可能性が高いです。

従業員貸付制度の借金を任意整理する場合

従業員貸付制度とは、会社からお金を借りることができる制度で従業員の福利厚生の一環として行われていることがあります。
従業員貸付制度の借金を任意整理する場合は、貸主である会社との交渉になるため、会社に任意整理がバレてしまいます。

SNSなどで任意整理や借金について書き込んだ場合

任意整理や借金については、自分から話さない限りバレることは少ないです。
SNSは身元がバレていないから何を発信しても安心と油断していると、思わぬところから情報が漏れてしまうこともあります。

弁護士や司法書士に依頼せず自分で任意整理する場合

任意整理は、弁護士や司法書士に依頼せず自分で消費者金融等と交渉して行うことも不可能ではありません。
ただし、この場合は交渉中でも消費者金融等からの請求や督促が止まりません。
その結果、裁判所からの支払督促や訴状が届いてしまったり、督促の電話が頻繁になされ、家族や会社・勤務先にバレてしまうこともあります。
借金や任意整理していることを家族や会社にバレないようするためには、早めに弁護士や司法書士に相談することが大切です。

任意整理が家族や会社・勤務先にバレた場合はリスクがあるのか？

任意整理が家族や会社・勤務先にバレた場合はどのようなリスクがあるのでしょうか。

配偶者に離婚を求められる？

任意整理や借金が家族にバレた場合、配偶者に離婚を迫られるのではないかと心配したり不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと、借金があり任意整理をしていることは、それ自体では原則として離婚原因にはなりません。
ただし、ギャンブルや遊ぶために借金をしており、家庭にお金を入れず、家族が生活に困窮しているのを顧みないといった事情などがある場合は、離婚原因になる可能性もあります。

会社・勤務先から解雇されたり降格処分になる？

任意整理や借金について会社・勤務先にバレた場合、解雇、降格、減給処分を受けるのではないか、出世に影響するのではないかと心配したり不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと、任意整理や借金が会社・勤務先にバレても、解雇、降格、減給処分を受けることはありません。
会社が労働者を解雇、降格、減給処分するには、客観的に合理的な理由が必要とされています。
例えば、

• ・労働能力が不足している。
• ・就業規則違反を繰り返している。
• ・重大な事件を起こした。

このような理由により、業務遂行に支障が生じている場合のみ、その程度に合わせた懲戒処分を行えることになっています。
労働者が個人的に任意整理や借金をしていることは、業務には関係がないことですから、そのことで仕事に支障が生じているのでない限り、解雇はもちろん、降格や減給処分を受けることもありません。

任意整理について家族や会社・勤務先にバレにくくするための方法

任意整理について家族や会社・勤務先にバレにくくするためには、以下のような方法を行う必要があります。
もし、任意整理のことが家族や会社・勤務先にバレたくない方は、このような対応をしてくれる法律事務所へ依頼するのが良いでしょう。
※全ての法律事務所でこのような対応をしてくれるとは限りませんので、あらかじめ家族や会社にバレたくないことを伝え、バレにくくする対応をしてくれるかどうかについて確認しておきましょう。

法律事務所からの郵便は郵便局留めか個人名義の封筒で送る

法律事務所からの郵便物が届いた際に任意整理のことが家族にバレてしまうことが多いです。
もっとも、法律事務所からの郵便物を郵便局留めにしておけば、家族に郵便物を知られることはありません。
また、郵便局留めにしなくとも、法律事務所名義の封筒ではなく個人名義の封筒で送れば、友人などからの郵便だと思われ、家族にバレる可能性は減ります。

法律事務所との連絡手段をメールやLINEにする

法律事務所との連絡手段が電話のみの場合、話す内容を聞かれてしまい、任意整理のことがバレてしまう可能性があります。
もっとも、連絡手段をメールかLINEにしておけば、内容を知られることは基本的にありません。
また、メールやLINEの通知が表示されないようにしておけば、スマホにやり取りが表示されることもなくなり、さらにバレる可能性が減ります。

自己破産や個人再生は家族や会社・勤務先にバレる？

任意整理と異なり、自己破産や個人再生の場合、家族や友人等にバレる可能性があります。

自己破産や個人再生が家族や会社にバレやすい理由

• 1. 自己破産や個人再生では、官報に氏名、住所等が公告されるから
• 2. 会社から退職金額がわかる資料を提出してもらう必要があるから
• 3. 同一生計の家族も含めた家計簿を毎月付ける必要があるから
• 4. 自宅の賃貸借契約書や家族の給与明細・源泉徴収票など、複数の資料を提出する必要があるから

自己破産や個人再生では、このように必要書類を集める際に、家族や会社・勤務先に理由を聞かれたり、怪しまれたりしてバレてしまう可能性があります。
もっとも、一人暮らしの方であれば自己破産や個人再生が家族にバレる可能性は低いです。

自己破産や個人再生は任意整理できない場合の選択肢

自己破産や個人再生は借金が膨らんでしまい、任意整理では解決できない場合に選択します。
そのため、借金の返済で困っている場合は、早めに任意整理によって解決することが家族や会社・勤務先にバレにくい方法と言えます。

まとめ|家族や会社にバレることを避けるためには早めに弁護士にご相談ください

いかがでしたでしょうか。
今回は家族や会社・勤務先にバレずに任意整理を行うことが可能かについて解説していきました。
家族や会社・勤務先に借金のことや任意整理のことをバレたくない場合は、早めに弁護士等に相談することが大切です。
借金の返済を滞納してからでは、債権回収会社に債権譲渡がなされてより厳しい取り立てが行われるようになります。
裁判所からの支払督促や訴状が送られてくれば、家族にバレずに済ませることはできません。強制執行により給与が差し押さえられれば会社にもバレてしまいます。
借金の支払いで悩みを抱えていたり困っている場合は、滞納する前に弁護士等に相談し任意整理を行うことが、家族や会社にバレにくい最善の方法です。