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2025/9/23

個人再生の清算価値とは?清算価値保障の原則について解説します!

個人再生

借金問題の解決方法には、「任意整理」「自己破産」「個人再生」などさまざまな手段があります。

その中でも「個人再生」は、借金を大幅に減額しながらも、自宅などの財産を守ることができる可能性のある手続きです。

ただし、個人再生では「清算価値保障原則」がひとつのポイントになります。

個人再生は借金の元金を圧縮できる債務整理の方法ですが、清算価値を下回る金額での再生計画は認められません。

この記事では、清算価値の意味や清算価値保障原則、清算価値の算定方法について、弁護士がわかりやすく解説します。

個人再生ってそもそもなに?

個人再生という言葉は聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれませんが、どのような手続きなのでしょうか。 まずは、個人再生について簡単に解説します。

個人再生は債務整理の方法のひとつ

個人再生とは、裁判所に申し立てを行い、借金を大幅に減額したうえで、原則3年(最長5年)で圧縮された借金を分割返済していくという債務整理の方法です。

自己破産のように借金をゼロにするものではありませんが、元金を圧縮しつつマイホームを維持できる可能性がある点が大きな特徴です。

個人再生では、継続的な収入が見込めることなど一定の条件はありますが、自己破産のような免責不許可事由がないため、ギャンブルや浪費が原因の借金であっても手続きができます。

個人再生は、自己破産とも任意整理とも異なる債務整理の方法です。

個人再生と自己破産は違う

債務整理の方法のひとつとして自己破産があります。

自己破産はすべての借金の支払い義務を免除してもらえますが、その代わりに一定額以上の財産を失うというリスクがあります。

これに対し、個人再生では借金は減額されるにとどまるものの、財産を維持できるというメリットがあります。 特に、条件を満たせば利用できる住宅ローン特則は、マイホームを残せることに大きなメリットがあります。

そのため、自己破産か個人再生かの選択は、財産の有無や守りたい財産の内容によって大きく変わります。

ただし、自己破産を行っても残せる財産もありますし、逆に個人再生でも財産の価値分だけ債権者への返済に充てなければならない場合があります。 ここからが、個人再生の清算価値へと繋がっていくお話になります。

清算価値とは?

「清算価値」は聞き慣れない言葉かもしれません。ですが、実は、個人再生を行う際にとても大切なポイントです。

自由財産以外の財産の金額

清算価値とは、債務者が保有する財産のうち、自己破産において債務者の手元に残せる「自由財産」以外の財産(自己破産において配当すべき財産)の金額のことです。

つまり、もし自己破産をしていたら債権者はこの金額の弁済を受けられたということになるわけです。

そして、個人再生の最低返済額は、この清算価値を下回ってはならないと定められています。

これが後述する「清算価値保障の原則」です。

自由財産とは

自由財産とは、自己破産を行っても債務者が手元に残すことが認められている財産のことです。 自己破産を行うと何もかもすべての財産が処分されてしまうというわけではありません。

自由財産は、債務者が日常生活を送る上で不可欠なものについては処分しないという考え方によるものです。

代表的な自由財産には以下のようなものがあります。

①99万円以下の現金

法律上、現金は99万円まで自由財産として扱われます。一方、99万円を超える場合には超えた金額に関しては債権者の返済に充てられるため回収されます。
なお、さいたま地裁の場合には、現金が99万円以下であっても、現金以外に②の財産が存在し、現金や②の財産の合計が99万円を超える場合には、超えた部分の金額は回収されることがあります。

②20万円以下の預貯金や保険解約返戻金・有価証券・自動車等

預貯金や保険解約返戻金、有価証券、自動車など個別の財産について、それぞれ20万円までであれば自由財産として扱われます。ただし、それぞれの財産が20万円以下であっても、合計して99万円を超える場合には超えた金額に関しては回収されることがあります。

③衣類・寝具・家具家電・食料・年金・生活保護費

衣類・寝具・家具家電・食料といった生活必需品や、年金や生活保護費といった社会保障給付は自由財産として扱われます。

このように、自由財産の範囲は法律で定められています。これは、債務者が最低限の生活を行うことができるようにするため、また債務整理後に生活再建をできるようにするためです。

現実問題として、債務者が持っているすべての財産を処分してしまうと、債務者は生活が立ち行かなくなってしまいます。

清算価値保障の原則とは

個人再生の手続きでは「清算価値保障の原則」があります。

これは、個人再生において必ず守るべき原則であり、最低弁済額との関係についても知っておく必要があります。

清算価値保障について

「清算価値保障の原則」とは、自己破産をした場合に債権者へ配当される金額(清算価値)を下回る返済額の再生計画(返済計画)は認められないというものです。

たとえば、自己破産をすれば財産を処分して200万円が債権者に配当されると見込まれる場合に、個人再生を選択すると最低でも200万円は返済しなければなりません。

これにより、個人再生を行う場合の債権者が自己破産の場合と比較して不当に不利益を受けることを防ぐ仕組みになっています。

最低弁済額

個人再生の最低弁済額とは、個人再生の手続きをした人が返済義務を負う最低金額のことです。

個人再生では、借金はゼロにはなりませんが、法律にしたがって元金が圧縮されます。この圧縮されたあとの金額に最低ラインが設けられているのです。 この最低弁済額については民事再生法で規定されています。

・借金総額と最低弁済額

借金総額100万円未満の場合:全額

借金総額100~500万円未満:100万円

借金総額500~1,500万円未満:借金総額の5分の1

借金総額1,500~3,000万円未満:300万円

借金総額3,000~5,000万円未満:借金総額の10分の1

この最低弁済額と清算価値を比較し、高い方の金額を下回る返済計画は認められないということになります。

清算価値算定のルール

清算価値を計算する際には、どの財産が対象になるのか、どの時点の評価額を基準にするのかといったルールが定められています。

不動産や自動車、退職金、保険など、財産ごとに扱い方が異なるため、正しい理解が不可欠です。

ここからは、算定のルールや財産ごとの評価方法について詳しく見ていきましょう。

基準になる日付は?

清算価値を算定する場合は、いつの時点での財産なのかがポイントになります。

算定基準については「再生計画認可時点の財産の価値」とされています。

裁判所への個人再生申立て時点や返済開始時点ではなく、再生計画が裁判所に認可される段階の価値で判断される点に注意が必要です。

財産が手続き中に増減する可能性はありますが、この基準日の時点での評価額が清算価値に反映されます。

清算価値はどうやって計算するのか

清算価値はどのように計算されるのでしょうか。

対象になる財産

清算価値を計算する際の代表的な財産としては、以下の財産があげられます。

・不動産

・自動車やバイク

・預貯金

・有価証券

・退職金

・保険解約返戻金

・99万円を超える現金

不動産の計算方法は?

不動産は清算価値の中でも金額が大きくなりやすい項目です。

住宅ローンの有無でも対応が異なります。

まず、住宅ローンを完済している場合は、その不動産の時価評価額がそのまま清算価値に計上されます。

たとえば、現在の市場価格が1000万円であれば、1000万円全額が対象となります。

住宅ローンの残債がある場合は、評価額から残債を差し引いた金額を清算価値とします。

(例)時価評価額2000万円 − ローン残高1500万円 = 清算価値500万円。

つまり、ローンが残っている不動産に関しては、実際に売却してローンを完済した場合に残ると考えられる「純資産部分」が対象として扱われます。

住宅ローン特則を利用した場合は?

個人再生では「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用することで、住宅を手放さず住み続けられるというメリットがあります。

住宅ローン特則を利用する場合も、不動産の清算価値の計算方法は同じです。

自動車の計算方法

自動車やバイクは生活に欠かせない移動手段である一方、資産価値があるため清算価値の対象となる場合があります。

評価額20万円以下:自由財産と扱われ清算価値に含まれません。

評価額20万円超:20万円を超える部分の金額は清算価値となります。

ただし、さいたま地裁の場合、自動車の評価額が20万円以下であっても、自動車を含めた全ての財産の合計が99万円を超える場合、超えた部分の金額は清算価値として扱われます。(この点は裁判所によって扱いが異なるため注意が必要です)

退職金の計算方法

退職金については清算価値がある財産として扱われます。

退職金見込額の8分の1の金額が20万円以下の場合:自由財産と扱われ清算価値に含まれません。

退職金見込額の8分の1の金額が20万円を超える場合:20万円を超える部分の金額は清算価値となります。

ただし、退職予定の場合には、退職金見込額の4分の1の金額で計算されるため注意が必要です。

例えば、退職金見込額が800万円で退職予定がない場合、800万円の8分の1の100万円のうち、20万円を超える80万円が清算価値となります。

なお、さいたま地裁の場合、20万円以下であっても、退職金を含めた全ての財産の合計が99万円を超える場合、超えた部分の金額は清算価値として扱われます。(この点は裁判所によって扱いが異なるため注意が必要です)

保険解約返戻金

個人再生の場合、保険を解約する必要はありません。

もっとも、仮に解約した際に返還される「解約返戻金」が清算価値に計上されることがあります。

解約返戻金20万円以下:自由財産と扱われ清算価値に含まれません。

解約返戻金20万円超:20万円を超える部分の金額は清算価値となります。

なお、さいたま地裁の場合、解約返戻金が20万円以下であっても、保険解約返戻金を含めた全ての財産の合計が99万円を超える場合、超えた部分の金額は清算価値として扱われます。(この点は裁判所によって扱いが異なるため注意が必要です)

まとめ

個人再生における「清算価値」とは、自己破産において配当すべき財産の金額のことです。

個人再生では「清算価値保障の原則」により、清算価値を下回る再生計画は認められません。

個人再生では、借金の元金を圧縮できますが、最低弁済額と清算価値を比較し、高い方を返済額の基準とします。

そして、清算価値の対象財産は不動産や自動車、預貯金、退職金、保険解約返戻金、有価証券、99万円を超える現金などで、それぞれ計算方法が定められています。

個人再生をする場合には、自分の財産がどのように評価されるのか理解すること、そして、専門家への相談が欠かせません。

清算価値を正しく把握することは、個人再生後の生活再建にも大きく影響するため必ず確認しましょう。

清算価値について理解した上で適切な返済計画を立てることが生活再建への第一歩となります。

 

 

セントラルサポート法律事務所

弁護士 安井孟(埼玉弁護士会所属)

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